のちに文豪になる女です。

「私は私だけになりたい」

 悲しいと泣く君にかけてあげる言葉がない。肝心な時、頭に浮かぶ言葉は全部的外れに感じて、私は、たぶん汚い人間になってしまった。歪んだ見方しかできない。

 

 言葉の裏を読んで、傷ついて、怖いからもう誰とも喋りたくないんだ。周りの人間が悪魔に見える。純粋さも変質したみたいだ。自分の心は、もう腐ってしまったんだなと思うと涙が出る。今もそうなのかは、判断力が鈍っているから、まるで分からない。

 

 救いを求めて本屋に入る。本屋に入って、2時間いても欲しい言葉は見つからず、絶望と孤独が深くなる。ゾンビみたいな顔で、本屋から出る。

 

 自分を見つめるべきなのか、もうこんな自分など見たくないのか、それすらも分からない。頑張りたいのか、もう頑張れないのかも分からない。

 

 自分が頭でっかちになっていることは薄々気がついている。考えすぎて、脳みそが肥大化したように感じる。思考に全てを奪われ、体の存在を忘れ、生活を忘れ、このまま進めば、生きることも忘れるんだろう。

 

 人の不幸を喜ぶようになった。周りの人の、笑顔が胸焼けする。ここまで腐っちゃったら、人間としておしまいだと思った。

 

 好きという感情を思い出せなくなった。どうして好きだったのか、思い出せなくなった。分からなくなったので、捨てるしかなくなった。そうしたら、身の回りの物がほとんどなくなった。まるで身辺整理をしているみたいだ。

 

谷川俊太郎さんの「捨てたい」という詩を読んだ。